輪るピングドラム第1話が面白かった

変身シーンのわけのわからない華やかさがすごかった。
このアニメで声優デビューした陽毬役の荒川美穂氏は、声の張りが足りないというか、凛々しく叫ぶような場面がへろっとしているなとは思ったが、そこ以外は気にならず好きな声だった。

以下は1話のネタバレあり。小説版で出た先の展開のネタバレは特にないが、アニメでも出た部分についてはふれている。




冒頭、CMで聞いていたBGMが流れてテンションが上がった。

やたら外観が派手な家に暮らす、冠葉(かんば)・晶馬(しょうま)・陽毬(ひまり)の高倉三兄妹の物語。更にヒロインがもう一人いるが、本格的な登場は二話からの模様。
壁の派手さに度肝を抜かれたw 小説では家の外見については特に触れられていなかった。背景がやたらと凝っていて、感想を書き連ねていたらキリがなさそうなぐらいだった。
(追記・見返したら家の外観についても触れられていた。「青や黄色やピンクに塗り分けられたトタンの壁」とあった)



書き込みまくっている一方で、背景を通るモブキャラクターはものすごい簡略化されていた。こういう簡略化の仕方はピクトグラムというそうで、ピングドラムと重ねているのではないかと言われていた。



表札の上にはガムテープが貼り重ねられていて、三兄妹の両親の名前が読めなくなっている。
何故か三人だけで暮らしていて両親は不在だが、その理由は不明。小説でも語られておらず、死別かなと思っていたのだが、ガムテープで隠すだけというこの扱いは邪険な態度が感じられる。子供が、死に別れた親の名に対してするものだろうか。


高倉家は、陽毬の趣味である可愛いもの集めの結果、かわいいものがそこら辺にある。その設定は小説で知ってはいたが、実際のビジュアルは想像を上回っていた。
ポットはゾウさん、ライトはシャンデリア風、他にも用途不明の原色の小物があちこちに散らばっている。幼稚園ぐらいの子供の部屋をレベルアップさせたみたいな部屋だ。扇風機は少々レトロな程度で普通のものだが、こんな風に飾りつけるようになる前から使っていたものなんだろうか。
ごちゃごちゃしているのに、カラフルさも扇風機やちゃぶ台のレトロさも不思議とまとまりがある。



陽毬がお味噌汁を飲むシーンは、小説でやたらに美しく描写されていた。アニメでも、星を散らし、ただお味噌汁を飲むというだけのシーンを神秘的に描写していた。病弱でいつ死んでもおかしくない妹の一挙一動を、愛情と切実さを持って眺める兄の視点。


電車が一つのモチーフになっているようだが、回想に入る時の演出が良かった。駅の電光掲示板風だ。



病弱で余命幾ばくもなかった陽毬は、最後の思い出にと兄二人を連れだって行った水族館で倒れ、担ぎ込まれた病院で死亡する。陽毬の死は重々しく湿っぽく描写されるかと思ったが、Aパートの最後に最期を迎えるというわりとスピーディーであっさりしたものだった。「幽々白書」の裏飯幽助の死のように、この死が一つの物語の終わりにはならず全ての始まりとなっているからか。あっちはたしか1ページ目で主人公が死んでいた。
陽毬が最期に兄二人に向けた「さよなら」は、口に出して言ったものではなく、心の中のつぶやきだったため、死に際の苦しそうな息遣いではなく、ごく穏やかな言い方。この「さよなら」がなんか好きだ。




死んだはずの陽毬であったが、水族館で晶馬に買ってもらったペンギン帽子をかぶりながら「生存戦略!」と叫び、復活する。目の色は元々薄いピンクだったが、ペンギン帽子をかぶるとより濃い色になり、白目の部分もピンクがかる。
生存戦略」はもっと腹から出したような声で言ってほしいと思ったが、普通の少女のような陽毬モードと高慢なペンギン帽子モードとで演技はちゃんと変えてくれていた。
ペンギン帽子がずり落ちて元の陽毬に戻った後の兄両名のリアクションが面白かった。兄二人は同時に両手を横に広げ「妹の謎の生還を喜び抱きすがる」ための準備ポーズに入るが、晶馬の方が先んじて抱きついてしまい、出遅れた冠葉が広げた手を持てあましてしばらくぴくぴくする動きが良かった。結局冠葉も抱きつくw
冠葉と晶馬は似てない双子だが、動きはシンクロしている事が多く、やはり双子であるのだなと思える。


「運命の至る場所」から来たと名乗った謎の人物の憑依(?)により生還した陽毬だが、奇妙な出来事はそれに終わらず、謎のペンギンがクール宅急便で三匹送られてきたりする。水族館のシーンで普通のペンギンが登場していたが、このペンギンたちはそれらとは異なるぬいぐるみのような奇妙な存在。グッズとして本当にぬいぐるみが発売されるそうで、ちょっと欲しい。

ペンギンはもっと愚鈍かと思っていたが、高速で編み物を行う描写が。この手でどうやって編んでるんだ……


平穏(?)な日常はやがて再び破られ、陽毬は再びペンギン帽子に憑かれ、今度はコスチュームチェンジまで遂げる。

この変身シーンが、なんかすごいのだがどうすごいのか説明すればいいのかわからないw
ここで流れる曲はロックバンドのARBが原曲を歌った「ROCK OVER JAPAN」。寡聞にして始めた知った曲だった。自分が生まれる前に発表された曲だ。
何故か「Welcome to Rock'n Roll Night Welcome to Rock'n Roll Night」が「世界樹のクローバー 世界樹のクローバー」に聞こえた。耳死んでる。
元は男性ボーカルの歌だが、アニメ中では少女声で歌われる。歌手の名前は「トリプルH」と表記されていた。小説を読んでいるとそのクレジットににやにや。


ペンギンがモチーフになっているというのはわかっているが、クマ型の巨大ロボのようなものはなんなんだろう。陽毬の部屋にクマのぬいぐるみがあるがそれ関連だろうか。意味を問うならば、なんでロケットが発射されてるんだとか、変身後に叫んだ「イマージン!」ってなんなんだとか、謎だらけだがパッションを感じた。



ペンギン帽子さんにより異空間に招かれた兄二人は、気づけば腕に手枷をかけられていた。それを外そうともがく動きが二人ともぴったり同じだったw 兄二人のシンクロはこれからもたくさんありそうだ。


高みにいたペンギン帽子さんは陽毬を延命させる代償として「ピングドラムを手に入れるのだ」などと語りながら、兄たちのもとへと下りて行く。階段(?)が肋骨みたいなデザインだった。ペンギン帽子さんの衣装は下りて行くにつれて剥ぎ取れて光になって消えて行く。


腕のフリルが消える。

スカートが消える。

襟(?)が消える。

そして最後は全裸に。


全裸の状態になってからはシルエットだけになり、冠葉の懐に飛び込み、冠葉の胸に腕を突っ込み、体内から球状のなにかを取り出す。りんごっぽく見えたような。
この取り出したものがなんなのか小説を読んだ時点ではよくわかっていなかったのだが、冠葉の中の理性だとか抑制心だとか、そういうものではないかとアニメを見ていて思えた。

最後、冠葉は眠る陽毬にキスをする。
実妹であるはずの陽毬へのこの行動は、ただ思いが募った末のものではなく、もしかしたらペンギン帽子さんに何かを奪われたためかもしれない。
だとすると、ペンギン帽子さんはそれを奪って何か得をするのだろうか。奪ったものを集めたりしているのか、奪った事で冠葉に何らかのアクションを起こさせようとしているのか。気になる。




OPは勢いや熱さのある曲を想像していたがゆったりした曲だった。

「もうすぐ消えるはずの世界に」で手から滑り落ちるりんごが映る。
このアニメは宮沢賢治作品をモチーフにしているらしいのだが、宮沢賢治はりんごに宇宙を感じていたという。ここで滑り落ちるりんごは消えそうな世界を映像化したものなのかもしれない。


落下していきながら体が足先が崩れて行く冠葉と晶馬、走りながら燃え尽きて行く苹果、と不吉さが漂うシーンがあった。苹果に関しては単に情熱あふれる性格を表わしているのかなとも思える。苹果は、キャラデザで受けたイメージを小説で大いに覆されたが、小説で受けたイメージをアニメでまた更に乱してほしい。



第1話では出なかったものの、今後メインキャラになると思われるキャラたちもOPでは登場した。
この人物は、小説に登場したある人だと思われるが、思っていたよりも華奢なデザインで驚いた。顔だけ見れば女性のようだった。
担当声優の予想が当たっていれば、この人はかなり低めで男性的な声のキャラになるはずだが、この外見でああいう声になるんだろうか。早く話してほしい。


はやさがたりないため2話以降はあまり感想は書かないと思うがこれからも楽しみだ。