第5話「哀しみの雨」の感想

今回は戦闘シーンではない部分で妙にぐねぐね動く不思議な回だった。

タイトルクレジットの錬成陣は、左がアレックスの手甲に描かれた錬成陣、右はマスタングの手袋の錬成陣。
前回もアレックスの陣が描かれていて、はじめなんの錬成陣か思い出せず「タッカーの錬成陣か?」とトンチキな事を書いてしまっていたので訂正しておいた。


以下は、6話以降のネタバレもあり。


ナレーションで「生体錬成の知識を得るため〜」と言っているが、「得る」を「うる」と発音すると「売る」っぽく思えてしまうので、そこは「える」と発音してほしい。


冒頭、エドは幼少期の頃を夢に見る。
摘んだトマトをエプロンに乗せるトリシャかわいいよトリシャ

錬成してつくったおもちゃをトリシャにプレゼントし、頭をなでなでされるエド。この頃は一人称が「ボク」。「オレ」に切り替わったのはいつごろなんだろう。
上目遣いのここのエドは、「甘えてる」感丸出しで異常に可愛い。


甘い夢は悪夢へと転じて、トリシャは人体錬成の失敗で出来た異形の物へ変わる。そして現れたニーナとアレキサンダーもまた、融合してキメラへと変化する。

「おにいちゃん」「あそぼ」この言葉が後々にもエドに辛い経験を思い出させるトラウマワードとなってしまう。
トリシャもどきの声とキメラの声は相変わらず、オカマキャラ風味ボイス。それぞれ、トリシャの声やニーナの声の面影を残しつつ異質なものへ加工する事はできないものだろうか。怖いシーンのはずなのにあの声は笑いを誘われてしまう。



悪夢から覚め、無駄によく動くエド。ついGIFにしてしまった。
今回のエドは弱った様子が強調されていたのだが、どうも女の子っぽくなってしまったところが時々あった。普段が、髪が長かろうと背が低かろうと、とても女には見えない風に描かれているから違和感があった。雄々しく弱れ!というのは無茶な注文だろうかw
アルは隣で手帳を開いていたようだったが、一晩中手帳を読んでいたのだろうか。


エルリック兄弟はキメラの処遇を訊ねにリザのもとへ行き、キメラの死を知らされる。エドは現場についていこうとするが「見ない方がいい」とリザに拒まれる。
ここ、ヒューズやアレックスでも同じ事を言いそうなところだ。アレックスだったら死んだ事すら打ち明けられないかもしれない。でも、序盤のマスタングだったら「君も見ておいた方がいいだろう」とか言ってしれっと連れて行ってしまい、後でリザに怒られる、というイメージ。




場面はリオールへと移る。レト神をめぐる暴動でリオールは荒れ狂っていた。

殺し合いの様相を呈する大人たちの中で、一人泣き崩れる女児。まだ乳歯が抜けるような年の子を一人残して親はどうなってしまったんだろう。暴動の渦の中にいるのか。
名もなきモブキャラの中に、たまに妙に可愛く印象的な女児がはさまれる事が多い気がする。ひょっとしてスタッフの中にロリコンが。


暴動を裏で操るホムンクルス三人組。

エンヴィーは今回が初登場。変身シーンの途中はシュール。錬成光を放ちながら徐々に姿を変えて行く様は、動画だと映える。
3話でペテンがばれてバッシングされていたレト教を、信者を扇動できるくらいに再び盛り立てるとは、エンヴィーの演説がすごかったのか。エンヴィーはそれほど賢くないキャラだと後に何度か描写されるが、ラスト辺りが脚本を書いてくれたのだろうか。

ラストさんマジ妖艶 ( ゚∀゚)o彡゚おっぱい!おっぱい!
エンヴィーが高山みなみ、ラストが井上喜久子17歳、この組み合わせはらんま1/2の天道姉妹を思いだす。これで日高のり子ホムンクルスのうちの誰かを演じていれば役満だったのだが。

グラトニーちゃんは表情が毎回可愛い。頭をポンと手を置かれた瞬間に驚いたように猫っぽい表情になり、続けてしょんぼり顔になるところが可愛い。兄弟のはずなのにラストと一緒にいると親子のようなところがよい。




スカー登場。場面が切り替わったらいきなりエドの傍らに立っているというものすごい唐突さw
「えっなんかいる」と思っている間にいきなり攻撃を繰り出してきた。神出鬼没の殺人鬼という設定とはいえ、なんか間がおかしいw

漫画での細かなやり取りはカットされ、スカーと兄弟の攻防アクションに重きが置かれる流れとなった。
足場を崩され落下しそうになったエドをアルが捕え、二人で宙ぶらりん状態になるところの動きが好き。

兄弟は普通に腕を振って走っているのに、スカーさんのこの走り方はww




アイキャッチ

Aパートはロイ・マスタング
なんで背景がピンクなんだ。焔を放とうとするおなじみのポーズ。

Bパートはスカー。
アニメも後半ごろになると、AパートとBパートでアイキャッチの背景色が異なっていたり、一つのアイキャッチの中にキャラを複数入れてキャラごとに区切って背景色を変えたりしていたが、序盤の頃はAパートとBパートで背景色を統一していた。
何故よりにもよって、いい年した男二人がわりとシリアスな顔をしている回で背景色にピンクを選んだw





スカーの「破壊の右手」により体を壊され、身動きできなくなるアル。破壊されたアルの体の破片が散るシーンがしょぼい。謎のいい動きをみせるシーンがある一方で、あそこはちょっとやる気が足りない感じだ。


スカーは続けてエドの右腕をも破壊しようとするが、できない。人体を破壊するつもりで行ったが、エドの右腕が機械鎧であったため。なんでも自由に破壊できるわけではなく、対象物の構成を理解できていなければ破壊は行えない。
だが理解さえできればなんでも破壊できるという事でもあり、二度めの接触エドは右腕を破壊されてしまう。
この右腕破壊のシーンもあまりやる気が感じられない。
漫画だと1ページ丸々使った気合の入ったシーンだけに差がなー
アニメだと、機械鎧どころか、生身の右腕が失われる下りを先に描いてしまっているから、ここは重視せず巻きモードなのだろうか。


機械鎧は、罪の証だのなんだのと辛気臭いものとして作中で語られる事がある一方で、欠損どころかプラスのものとして、「かっこいい」とか「便利」なものとして描かれる事も多い。
キメラに噛まれても平気、銃で撃たれても平気、生身の四肢だったらお釈迦になってしまうような攻撃でも耐えられる強靭かつSFチックに美しい、ヒーローの象徴のような捉え方もできるものだった。
それが、スカーの生身の右腕に触れられただけでバラバラに崩れる。あのシーンはインパクトがすごかった。
アニメは序盤からエドが弱々しかったりと、構成が異なるからあそこを強調する必要があまりなかったのかもしれないが。
漫画では、リオールや炭鉱の街などを救い、無敵っぽかったエドが、ニーナの事件で心を壊され、スカーの事件で体を文字通り壊され、それまでの数話で築いた無敵像を畳みかけるように崩されていた。でもアニメのエドは1話からいきなり強敵と戦って入院するはめになったりと、無敵像がそもそもつくられていない。だから「無敵像が壊されるインパクト」ってのはそもそもつくれないんだろうけど、うーん、画的な見映えはもうちょっと意識してほしかった。




アルを守るため、スカーに殺される事を甘んじて受け入れようとするエド
倒れこんだままで、機械鎧の接続部があまり映されない。後ずさりした時に、機械鎧が取れたために重さのバランスが取りにくくなったかのように、体の右側から倒れたせい。
だが、ずっと接続部を映すぐらいの方が、「戦う手段を奪われたから抵抗もできない」というエドの今の無力さが出せたと思うのだがなー
機械鎧に関係なく、ただの「変質者に襲われている児童の図」みたいになっている。


エドに「逃げろ」と呼びかけるアルの叫びの演技がよかった。
「貴様あああ」と叫んでいる途中で銃声が鳴り、「そこまでだ」という言葉と共にマスタングが登場する。その下りは画も音もいい調子だった。


スカーは、エドは外見から判断して自力で見つけたようだが、マスタングについては周囲の人の発言を聞くまで気づかなかった。
これは外見の特徴の差だろうか。
スカーは多分、国家錬金術師のプロフィールなどは入手済みで、エドマスタングの外見情報についても知っている。「金髪の長髪をみつあみにして、赤いコートを着て、巨大な鎧と一緒にいる事が多い」というエドは発見しやすくても、「黒髪短髪で軍服を着ている事が多い」というマスタングは、そんな姿の人は他にもたくさんいるだろうから、見た目だけじゃわからないだろうな。


破壊の右手は、数十秒手を当て続けないといけないといった制限があるわけではなく、一瞬触れればそれで十分なようだから、とりあえずエドを殺害した後でマスタングに向かっていった方がスカー的にはいいんじゃないかと思ったりしたが、エドはもういつでも殺せる状態になっているから、先にマスタングを殺して後で仕留める腹だったのか。

マスタングは揚々とスカーに向かっていったものの、雨の日は焔の錬金術を行使できないためリザに止められる。スカーとすごい至近距離だw
リザのこの足払いは印象的だったのか、ゲームの「背中を託せし者」でもリザの攻撃動作の一つになっていた。リザは遠距離からの攻撃には使えたが、接近戦が弱いキャラになっていたなー。あのゲームは遠近どちらでも強力な技が使えるイズミとメイが使いやすかった。



マスタングが倒れていきながら画面の隅で(><)こんな顔をしているw
リザの銃撃を避けるスカーのステップがすごい。スカーは反復横とびでよい成績を出してくれそうだ。



雨の日は無能なマスタングに代わり、アレックスが奮闘する。
石を瞬時に武器に錬成して攻撃するところの動きがかっこいい。

アレックスは特に気合を入れて描かれている気がする。
アレックス・ルイ・アームストロングかっこいいよアレックス・ルイ・アームストロング
ついこのポーズを真似してしまった。





ハボックに助け起こされるまで、エドは周囲のやり取りにろくに反応も取れずに放心状態のまま。
エドが無抵抗になったのは、二人とも死んでしまうよりは、アルだけでも生かして自分は死を受け入れよう、という決意に基づいての行動であり、けして意思喪失をしたわけではないはずなのだが……。

放心しているエドを助け起こすハボック、後にエド上着を羽織らせるリザの笑顔がアップになるところ、と、エドの周囲の大人たちが目立って描かれる。大人に支えられる子供のエド、という図を強く描くには、エドに弱くいてもらう必要があったのだろうか。


改めて漫画を読みなおすと、漫画の序盤のエルリック兄弟は「ふたりぼっち」な感じがすごくした。旅先で人とふれあうことはあるが、すぐに離れて別の街に行き、ふたりぼっちで他に寄る辺ない立場に見えた。
だが、二人の事情を知った上で接してくるマスタングや他の軍人たち、師匠であるイズミ、帰りを待っていてくれるウィンリィなどが登場していき、旅は二人で行っていても、別の場所で大勢の人たちが支えてくれていた事が描かれていく。そして、序盤の旅もただの点に終わらず、線となって物語全体をつなぐものであった事が表わされていく。


一方、アニメは最初からふたりぼっち感がない。1話からいきなりマスタングたちが登場する。マスタングエドに対して親しそうに軽口を叩くし、アレックスは兄弟を子供扱いして案じるし、ヒューズは兄弟に宿を提供してくれたりする。兄弟を支えてくれる大人たちが一気に登場し、更には2話ではもうロックベル家の人々が描かれる。そこには漫画序盤での、二人だけで何もかもをこなさなければならいといった焦燥感のようなものがない。


前に何かのインタビューで監督だったか脚本家だったかが「ファミリー向けを意識した」といった発言をしていた。シーンによっては、漫画よりもグロテスクになった描写などもあったのにどこらへんがだろうと思ったが、子供である主人公らが、大人たちに支えられて生きている様子を序盤から描く事を指していたのかと、漫画と比べて見てみると思えた。
漫画は、序盤が二人ぼっちだったからこそ、少しずつ輪が広がって行く感じが面白かったので、アニメが最初からキャラを大量に出しているのは賛否色々とあった点ではあるが。



銃を撃つシーンのリザがなかなか美人に描かれて良かった。総作画監督がいないので毎回けっこうキャラの顔が変わるが、リザは特によく変わる。
リザの銃撃によってスカーがイシュヴァール人である事が皆に明らかとなるが、それに対するマスタングとアレックスの反応は、ただ驚いているのではなく、罪悪感を感じているようなものとなっている。




アルは駆け寄ってきたエドをいきなり殴り飛ばす。
「生きて生きて生き延びてもっと錬金術を研究すれば 元の体に戻る方法もニーナみたいな子を救う方法も見つかるかもしれないのに その可能性を捨てて死ぬ方を選ぶなんてそんなマネ絶対に許さない」
自分たちの体を取り戻すという事だけを目的にしていた兄弟が、自分たち以外の人も救いたいと明確に口に出したのはここがはじめて。アニメにおいて、アルが激怒する様を見せたのもここがはじめて。ニーナの死とスカーの登場は本当にターニングポイントだなー。


漫画ではアルは、ニーナについて触れる際「ニーナみたいな可哀想な子」という言いまわしを行っていた。
「可哀想な」という言葉がアニメで削られたのは、後のアル自身の発言である「不自由と不幸はイコールじゃない」のあたりを受けての事だろうか。そこでスカーはアルの事を一方的に哀れな存在だとしたが、アルは「哀れに思われるいわれはない」と返していた。これってニーナにも言える事だ。タッカーのした事は傍から見ていてひどい事ではあるが、ニーナ自身があれで不幸になったかどうかはわからない。大好きなアレキサンダーと一つになって、大好きな父親が「さてい」に通れるのなら、ニーナ自身はけっこう幸せだったかもしれない。それを言ったら「救う」という言葉も適切かどうか怪しくなるので、書いているうちに考えすぎなだけな気がしてきた。



兄弟が生きている事を噛みしめている中で、降りしきっていた雨が止み、空に太陽が差す。
ここは漫画から明確に変わったシーンだった。漫画では、雨は降り続けていた。スカーの事を指してヒューズが「これから荒れそうだな」と語り、呼応するように荒れた空が映された。
漫画ではこれから先の事を思案する大人たちの心境、アニメでは生き抜けたことにひとまず安堵する兄弟の心境が天候に反映されたようだ。





イシュヴァール戦についての話を聞く兄弟。
内乱のきっかけは軍将校が誤ってイシュヴァール人の子供を殺した事……と語られるシーンで映されるクマのぬいぐるみが漫画とアニメで別クマになっている!
アニメでは、クマの片目のビーズが取れて地面に落ちている。

イシュヴァール付近の地図、ラッシュバレーやユースウェルもある。



イシュヴァール殲滅戦に赴く国家錬金術師たち。アイザックさんがいる。アイザックさんがいる。ヒゲのないアレックスには激しい違和感がある。
みんなが厳しい顔つきの中で、キンブリーは一人だけ微笑んでいる。

グラン准将やマスタングが順々に戦いの様子を見せる中、やはりキンブリーだけがいい笑顔だ。
オリジナル話だった1話といい、ところどころでキンブリーのチラ見せが増えている。



次回はウィンリィとマルコーが登場する回。つくづく序盤は話が圧縮されている。
2話でもうウィンリィの顔は割れているのだから、ここはゴーグルもなしでアップのウィンリィ顔を見せてほしかったところだったが、「現在のウィンリィ」が出るのは次回がはじめてだからお預けにしたのだろうか。


前回 第4話「錬金術師の苦悩」の感想