第4話「錬金術師の苦悩」の感想

ニーナがかわいいニーナがかわいいニーナがかわいいニーナがかわいい声優がリアル女児とかああああ可愛い可愛いのにあんな事に結局なるなんてというかあんな事になる子なのにあんなに可愛く描くなんてスタッフ鬼畜ああああ可愛い
この回はもうこんな感じで見ている間中「ニーナ!ニーナ!」とか「あああああ」という叫びばかり脳内を駆け巡っていた。


ニーナを演じている諸星すみれ氏は収録当時九歳の子役で、声が、声がなんかもう本当に当たり前の事だが幼い女の子そのもので、聞いてて爆発しそうになる可愛さだった。本人の癖なのか、ニーナというキャラを演じる上で指示されたものなのかは知らないが、笑い声の「ウヒッ」という言い方が凶悪な可愛さ。「ウヒッ」て文字にすると変かもしれないが、実物のニーナの「ウヒッ」はもう本当に可愛くてああああああああ


ニーナにとてもハァハァした回だったが、それ以外にも全体的に4話は良かった。3話は絵も話のテンポもよろしくなくて放送当時落ち込んだが、4話でテンションが上がった。話の内容は暗くて落ち込む展開だったが。

タイトルクレジットの、この右の錬成陣はなんだろう?
大きく描かれているから多分今回深く関わっている錬成陣だと思われるが、どこかで描写されていたろうか。
漫画とアニメ両方の「錬金術師の苦悩」の回を見てみたが、どこにも登場していないような。見落としてしまったか、他の回に出ているのか。
本編に出ていないだけで、タッカーがニーナに対して行使した錬金術を発動するための陣がこれなんだろうか?
(4/12追記:アレックスの錬成陣だった。何回も見ていたはずなのに何故か描いている時すっぽり抜け落ちていた。これは恥ずかしい。アレックス今回特に目立たなかったと思うのだが何故だろう。漫画でのアレックス登場相当回は次話であるし)


けっこうアニメは漫画からサブタイトルを変える事が多かったが、「錬金術師の苦悩」というタイトルは好きだったので、そのまま使われてよかった。


以降、4話のネタバレ注意。


冒頭、漫画よりも早いタイミングで登場したスカーがバスク・グラン准将と対決。
スカーVSグランは漫画ではおまけページでギャグっぽく描かれていたが、アニメは内容をけっこう変えている。

グランさんはぬらぬらと光る手甲がかっこいい。あと超重力なヒゲ。
このシーンの少し前で、グランさんが両腕を交互にもぞもぞっと動かす描写がある。グランさんは最初から手甲をつけて歩いていたわけではなく、ポケットかなにかに入れていた手甲を取り出してあそこでもぞもぞと取りつけたのかなと思った。それとも、あのもぞもぞは、戦いやすいように袖をめくっただけか?


果たしてグランさんは最初から手甲をつけていたのか、もぞもぞしている時につけたのか?

もう少しシーンを戻してグランさんが一人で歩いているところを見て見たが……小さすぎてわからない。
拡大すると手が灰色なので、つけているように見えない事もないが、手甲のようなゴツゴツした形ではなく素手のように見えるような……わからん。
敵が現れたからもぞもぞと手甲をつけだすというのもなんか間抜けなので、最初からつけていたに一票。
この時のグランさんは、荷物をなにも持たず、軍服姿で歩いている。プライベートや、帰宅途中などではなく、恐らくは仕事でパトロールをしていたのだと思われる。プライベートでも手甲をつけているとなかなかの変人だが、パトロール中なら警戒しているだろうしセーフ。



グランさんの錬成した大砲を軽々と避けるスカー。グランさんは更に鎖のようなものを錬成し捕縛を試みるがそれすらも避ける。
走り方がブーン⊂二二二( ^ω^)二⊃とかキーン(アラレちゃん)を連想させる。だがあくまでもシリアス。

どんな攻撃も避けられてしまうので、スカーを動けないよう封じ込める事にするグランさん。グランさんも体術はすごい人らしいが、流石に接近戦は危ないと判断したか。


ここまでのグランさんの動きはよかった。だが、ここからがいただけない。

スカーの動きを完全に封じたと安心しきったグランさんは「たわいもない」などとつぶやきながら無防備に近寄り……お亡くなりに。
体術で競り負けるならばともかく、油断がもとで殺されるというのはグランさん好きとしてはちょっと扱いが不憫。軍隊格闘の第一人者と言われるほど力量があり修羅場もくぐっている人だろうに、なんという無警戒さ。スカーを封じ込めるのに錬成した壁の頑丈さをよほど過信していたのだろうか。グランさん間抜けだよグランさん

スカーの人体破壊により顔面を破壊されたグランさんだが……下のシーンだとグランさんの顔がきれいだぞ? 血が大量に飛び散っているのでもっとスプラッタな顔になっているべきところだが、画面に映らぬアゴから下だけが吹っ飛んでいるのか?
漫画で人気の高いグランさんに漫画とは違う死にざまを与えてしまったので、グランさん好きに配慮して描写がソフトになったんだろうか。以後の話を見るに、スプラッタな描写自体が規制に引っ掛かかるわけではないようだった。

スカーの目がアップで映され、それが同じ丸い形をした月へと切り替わる。
スカーの目の色はここではまだわからない。



「炭鉱の街」と「車上の戦い」はアニメからログアウトしました。
漫画の「炭鉱の街」で初登場を遂げ、その後本編に大きく関わるようになったヨキはここでは顔を見せるだけの存在に。

本当にさらっと触れるだけで、漫画未読者には特に印象に残らず、漫画既読者に対して「ここでは出ないが存在が消えたわけではないよ」と示すのみとなった。


炭鉱や汽車などが前面に出てくるあの二つのエピソードは、鋼の錬金術師の世界の前時代的な生活感があふれていて好きだったので少々残念。話数の制約上、必要な伏線だけを拾いあげて削れるところは削るという方針で行くのは仕方がなかったのだろうが……。



エルリック兄弟はマスタングに紹介され、生体錬成にくわしい『綴命の錬金術師』であるショウ・タッカーのもとを訪れる。

漫画では多数の本が積み重なる、整理の成されていない様子が映されるに留まったが、アニメじゃ整理整頓の次元を通り越してかなり不衛生なタッカー邸。蜘蛛の巣が張ってたり、食器は洗ってなかったり。
お金あるんだから使用人でも雇えばよいものだが、部外者を招き入れては困る後ろ暗い部分があるからそうもいかなかったのか。食器がこれだけ重なっているという事はちゃんと自炊してたんだろうなー。外食産業があまり発達していないから面倒でも多少は自炊せざるを得ない、という背景があったりするのだろうか。

タッカーさんのこの、太めな体格でもないのにたるんだ感じのアゴやらわずかに生えたひげやらが、いかにも無精な感じ。そして発光する眼鏡がこわい。街を歩いているだけで職務質問を受けてしまうタイプだ。


タッカーの娘のニーナと、愛犬のアレキサンダー
アレキサンダーの犬種は…なんだろう? クレバースか? ガイドブックか何かに犬種について詳しく書いてあるかな?
兄弟が自分たちの体の事情について明かしている間、部屋の外に出されたニーナはアレキサンダーと遊ぶ。この花冠はシロツメクサかな? 作中時間は春〜初夏ぐらいだろうか。


このシーンはアニメオリジナル。漫画はけっこうニーナという人間像をシンプルに描いていたが、アニメは可愛らしさを強調するような描写を隙あらば詰め込む。あざといぞあざといぞと思いつつも可愛さには抗えない。ああ可愛い




タッカーの研究室のドアは頑丈そうな造りになっている。玄関などは普通の家っぽい造りだったが、キメラが逃げる恐れがあるからここだけは特殊性なんだろうか。
下のキメラは顔が三つついた犬のようなもの。ぎゃんぎゃん吠えていたし、防音性も考えられた結果があのドアだろうか。
タッカーは人語を解するキメラにこだわっているが、知能面が低かろうと、あんな奇妙な生き物が造れるのなら、好事家あたりにでも売りさばけば当面の収入は得られそうだ。研究のためだからこそ許可される行為であって、キメラ造っては売るとかやってたら上層部とか愛護団体とかに怒られるんだろうか。


タッカーの資料室にて情報収集を行うエルリック兄弟。

その様子をこっそり覗くニーナがこれまた可愛い。なんか可愛い可愛いと書きすぎて可愛いという単語がゲシュタルト崩壊し始めたがああ可愛い
覗いている事がアルにバレてしまい、ハッとして顔を隠すが、またおずおずと顔を出してきて「ウヒッ」て笑うのがもうああ……ああああ
そりゃアルも資料検索やめて遊びの相手もしたくなってしまう。ああニーナちゃんと遊びたいよう〜


「遊ぼう」と自分からねだるのではなく、遊んでほしそうに眺めるだけだったとか、ニーナの普段の生活が思い浮かべられる。タッカーと遊んでほしくても、タッカーは忙しそうだから迷惑をかけられないと、ただこっそり見つめるだけの日々をすごしてきたんだろうな。
何歳なんだろう。義務教育とかない世界だろうけど、多分まだ5歳ぐらいの未就学児で、外に友達とかもいなくて、まだ家の中だけが世界の全てな子だったんだろう。父親が忙しくて相手にしてくれない事が続く中、客人が来て、しかも遊びの相手までしてくれるとか本当にうれしかっただろうな ああああ



年に一回の国家錬金術師の査定を通らねば資格を取り上げられてしまうのだとタッカーはニーナに語り、「もう後がないんだよ」とつぶやく。
査定通れずに資格を消されても「後」なんていくらでもあったんじゃないか。タッカーは30代前半くらいかな? 錬金術師としてやっていけなくなっても再就職という道だってあっただろうに。アメストリスも不況で、錬金術以外は取り柄のなさそうなタッカーに対して吹く風は厳しかったのか。国家錬金術師に与えられる金と権威が無限にあったはずの選択肢を見えなくしてしまったか。



アイキャッチ

Aパートは明るい感じのニーナとアレキサンダー
アレキサンダーの顔がなんか違う。目玉がでかめに描かれているせいか?別犬さんのようだ。ニーナのほっぺがぷっくりしてて可愛い。

Bパートはしょぼくれタッカー。


本編や他の回のアイキャッチと比して特徴的なのは、褪せたような色合い。

アイキャッチと本編を比較してみた。やはり今回のアイキャッチは本編より彩度を落として描かれているようだった。正確には彩度ではなく他の言葉の方が適当なのかもしれないがあまりその手の用語がよくわからない。
ニーナとアレキサンダーは元気いっぱい、といった様子の姿だが、この色合いのせいで「……という時期もあったのさ」という回想風のように見えてしまう。



翌日にエルリック兄弟は再びタッカー邸を訪れる。
「お父さん最近研究室ばっかりだからさみしいな」
ニーナのその言葉に兄弟は自分たちの幼少期を思いだす。
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この回想はアニメのオリジナルシーン。
兄弟は、ただ目上の者として幼児の遊び相手を務めるだけではなく、ニーナをかつての自分たちの姿と重ねていたのだと示される。姿をちょくちょく挟む事で、兄弟の父親を印象付けをしたいというのもあるかな。
体の事情を聞いてもただ「辛かったね」とだけ優しく言ったタッカーの人柄は、兄弟を残して失踪した父親と比べれば、多少遊び相手になってくれなくても、兄弟から見れば理想的な父親に見えただろうなー。同じ錬金術師で、同じ父親でも大違いだと。
笑顔で父親について語るニーナの姿はさぞまぶしかったろう。



大きな犬の背に乗るというシチュエーションは憧れだ。
ハァハァ



一方のタッカーの追い詰められた様子。
ここで流れているBGMの「Pastorale Rondo」は明るいシーンで使われるとひたすら明るく聞こえ、暗いシーンで使われると不気味に聞こえるという不思議な曲だった。兄弟とニーナが遊んでいるところからタッカータイムまで継続して流れている曲なのだが、タッカータイムに入ってからややボリュームのしぼられたこの曲の不気味な事よ。
タイトルは直訳すると「田園曲のダンス」だから明るい場面を想定した曲なのだと思うが。



場面変わって、スカーについての報告を聞くヒューズ。それを伝えるのはマリアさんで、ちょっとだけ出番が早くなった。

上の画像は、第一話でヒューズが見せた写真だが、同じ物を机の上に飾っているw
この座り方、勤務中とは思えないだらしなさだなーw

夕方になり、真っ赤に染まった部屋の中で、エルリック兄弟はタッカーから昔話を聞く。
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漫画では姿形が全くわからなかったタッカー夫人がアニメにてまさかの初登場。顔や声やらはやっぱりわからないが。
拳を固めて、あわや殴り合いにでも発展しかねない様子の夫妻。そしてアレキサンダーに身を寄せて涙目で両親を見つめるニーナ。
ニーナは今でも、親にあまりかまってもらえないという、ぼんやりとした悲しみを抱えてはいるが、両親のこんな姿を見せられるかつての日々と比べれば、ずいぶん穏やかで幸せな毎日を送れていたんだろうな。タッカーは激しい喧嘩をするタイプではなく、ある日突然爆発するというタイプかと思っていたので、この姿は意外だった。そんな姿をニーナが泣きながら見つめていた事があるというのも。ひたすら陰りのない子だと思っていたから。
その時から今まで、ずっと一緒にいてくれたアレキサンダーはニーナの腹心の友なんだろうな。


昔のような暮らしに戻りたくないからなんとしても査定に通りたいと語るタッカー、苦い顔でそれを聞くエド
父の言葉を聞いての「だめだって言われたら、あたしとアレキサンダーがえらい人に怒ってあげる」というニーナの言葉がこれまた可愛くて可愛くてああああああああああここら辺の夕方の様子は全てオリジナルシーンだが、もう可愛らしさが強調されすぎて見てて滅んでしまいそうになる。ニーナに怒られるとかどんなご褒美だよニーナに怒られたいよ

「明日はお父さんが遊んであげようか」とのタッカーの言葉に喜び、タッカーに飛びついて抱きつくニーナ。
ああ本当に可愛いなんだこれ

それを見て笑うエドの表情が、ホッとした感じ。
もしかしたらタッカーは査定をパスできないかもしれない、でも環境が変わってもこの親子は大丈夫だ、そう安心できたのだろうか。
タッカーの「あの頃には二度と戻りたくない」という言葉の「あの頃」をきっとエドは「家庭不和であった頃」と捉えたろうが、タッカーにとっては「貧しかった頃」であって、そこにはニーナがいなくてもよかった。でもエドはそれをわかっていなかった。
アルは表情が変わらない分、ここの下りではニーナによく言葉をかけていた。幼児に対する優しい声。
ああそして以降は暗転



更に翌日にタッカー邸を訪れたエルリック兄弟は、とうとう完成したという『人語を解するキメラ』をタッカーに見せられる。

タッカーの言う言葉を復唱し「えどわーど」と言葉を発するキメラの姿にわくわくした様子のエド。だが、続けてキメラの発した「おにいちゃん」という言葉に、このキメラはニーナとアレキサンダーをかけあわせて造ったものだと勘付いてしまう。
この「おにいちゃん」のところのキメラの表情が「また遊んでくれるの?」という感じに、笑みに見えるのがまたきつい。


このキメラの声が、どうもイメージとあわなかった。オカマキャラの声みたいだというか。ニーナそのままの声ってのはだめだろうが、ニーナの声にエフェクトをかけたわずかに名残りがあるような声がよかったな。


動物と動物をかけあわせて人語を解するキメラを造れたらそれはすごい事だが、人間と動物をかけあわせて造っても、それはすごくはない。倫理観の問題だけではない。このキメラは明らかにニーナよりも知能が低下している様子で、言い方は悪いが「劣化」しただけでしかない。本来求められる人語を解するキメラとは、あくまでも「下位生物と下位生物をかけあわせて上位生物を造る」というものだろう。人間を劣化させただけの存在は意味がないだろうな。
人間の知能や手先の器用さと、犬の嗅覚と俊敏性など、いいとこ同士を掛け合わせて造りだすとか、そこまでの技術はタッカーにはなかったようだ。キメラの外見からしても、大きいアレキサンダーと小さなニーナをその体積のまま単純に融合させたような、犬分が多めな姿になっている。良い部分を取捨選択するほどの技能は備わっていないようだ。
コーネロのところにいた、異なる生物の四肢や胴体を接合して造ったキメラよりは、こういう根本からブレンドして造ったようなキメラの方がまだ技術的には上になるのかな?


2年前に妻を、そして今度はニーナとアレキサンダーを実験材料にしたというタッカーをエドは殴りつける。
人の命をもてあそんだとして批難するエドをタッカーは「君も私も同じだ」と人体錬成の事を指して言い、それがエドが拳を奮うきっかけとなる。否定しきれない部分があるから、とにかく黙らせたい、という色もある。

落ちたタッカーの眼鏡に、タッカーとエドが映る。「物に姿が映る」という演出をアニメスタッフは好んでよく用いる。
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エドは、タッカーの返り血を浴びながら「違う オレは 錬金術師は こんな事 オレは」と叫ぶ。その合間に、アルとキメラが共に入ったカットが何度か映る。今のこのエドにとって、アルとキメラは同じようなものに思えてしまったんだろう。



ひたすらタッカーを殴り続け、拳を高く振り上げより強い一撃を与えようとしたところで、エドはアルに止められる。
エドは止められてもしばらくはまだ昂りで体が震えていたが、少し落ち着き、そして視線に気づいて振り返る。キメラの前で、というかニーナの前で、父親からひどい言葉を引き出させてしまった事や、父親を殴り続けてしまった事に恐怖しているよう。


キメラの「あそぼうよ あそぼうよ」が痛い。
ニーナは遊ぼうと自分から誘う事はなかった。遊んでほしそうに覗き見るだけで、相手が遊ぼうと言ってくれるのをただ待つ事しかできないくらいに、幼いながらも気遣いしてしまう子だった。
キメラとなって知能が低下して理性も薄れてから初めて、あそぼうあそぼうと繰り返し言うようになった。ずっとニーナが言いたかった言葉なんだろうなと思わせる。
ニーナがニーナであった頃に、タッカーは前日の「遊んであげよう」という約束を遂行してくれていたのかな。せめてそれぐらいの優しさをタッカーに持っていてほしい。



ここの描写はアニメオリジナルで、放送当時に賛否が分かれたところ。
漫画でのタッカーは「きれいごとだけでやっていけるかよ」と兄弟に対して吐き捨てていた。あくまでも正気を保っていた。
アニメのタッカーは兄弟をスルーして自分の世界に閉じこもったように、銀時計を手に「間にあったんだ、これでまた国家錬金術師に…」とつぶやく。銀時計をエドに蹴り飛ばされると、必死でそれを這い追いかける。兄弟に知られてしまった以上、隠し通せずに事が露見するのは明らかで、間にあう間にあわないというものではないのに、まるで現実見ていない。ネジが吹っ飛んでしまっている。
常軌と狂気の間をふらふらしている精神状態だったタッカーは、エドに責められ一時的にプッツンしてしまったのだろうかと、それほど違和感はなかった。銀時計=国家錬金術師資格がタッカーにとってそれだけ甘い存在だったのだとも示されていた。



雨の中でただ座りこんでいたエルリック兄弟。

「軍の狗と呼ばれようが悪魔と罵られようが オレはアルと二人、元の体に戻ってやる
 だけどな オレたちは悪魔でも ましてや神でもない 人間なんだ 人間なんだよ
 たった一人の女の子さえ助けてやれない ちっぽけな人間だ」
途中までの震えた声などはイメージ通りだったのだが「人間なんだよ」の部分、上を向いて絶叫する、というのはイメージから外れた。
あの「人間なんだよ」は、マスタングに対して多少八つ当たり気味に叩きつけた言葉のように思っていた。まあ前後でのマスタングエドへの言動自体細かいところは漫画から変わっているのだが、アニメだけで見てもこの叫びはあまり好きではない。


漫画を久々にこの前読み返したのだが、漫画ではこの話の冒頭に、マスタングの行使した焔の錬金術の残骸を見た一般兵たちが「人間じゃねえよ」とつぶやくシーンがあった。
「人間なんだよ」は冒頭のこの台詞と対にさせていたのかと今更ながら気づいた。



タッカーは裁判が行われるまで、憲兵に見はられ自宅謹慎する事になった。
憲兵は家の外で見張っているだけのようだったが、タッカーのすぐそばにいさせなくてよかったんだろうか。逃亡しか警戒してなかったようだが、自殺は懸念されなかったのか。不祥事を起こしたタッカーが自分で自分に引導を渡してくれるなら、その方が楽だし別にかまわなかったのか。

ここら辺、背景のパースがすごい狂ってて怖い。屋根裏部屋などの壁が斜めになっている部屋にいるのではなく、演出としてこうなっているだけ。他の角度から見たシーンでは壁は真っ直ぐになっていた。壁が倒れてきそうで圧迫感がある。
タッカーはキメラへに「ニーナ」と語りかける。病んでる感じはするが、それほど吹っ飛んでるわけじゃなく一応まともに戻ってる感じだ。


そこに雷鳴と共に現れるスカー。雷の効果がかっこよかった。

ここもパースが狂いすぎててこわい。見てて不安になるなる。
床が斜めに見えるから、ずりっとすべってそのまま窓突き破って落下していきそうだ。

スカーがタッカー邸に押しいるために殺した名もなき憲兵AさんとBさん。何ら悪い事をやっていない人たちなのに理不尽だ。可哀想だが、地面の溝を伝う血がきれいだなー



スカーの右手から放たれた錬金術によって顔面を破壊され死亡するタッカー。
背景の歪みが怖い怖い演出がホラーだ
タッカーは糞人間だが、年一回の査定にさえ通れたら後は楽な暮らしができて名誉もある立場に拘泥するというのは理解できるし、けっこう好きだったりする。でもその死は特に悲しく思わなかった。


国家錬金術師の居住は、プライバシーとかもあって一般人が知ろうとしてもなかなか知りえないものだと思われる。だからスカーはこれ以降で描かれるケースにおいても、国家錬金術師殺しを行う時は、ほとんどの場合は道端で待ち構えたり、偶然出会った事を利用して事に及んでいる。自宅に押し掛けたというのはタッカーの例しかない。
スカーがタッカーの居住地を知れたのは、タッカーのキメラ事件が口コミで近辺に知れ渡った上に、まるで目印のように憲兵が家の前に立つようになったためだと思われる。事件が公にならなければ、タッカーがニーナをキメラにしなければ、家がスカーに割れる事もなく、殺される可能性も低くなっていただろう。
タッカーの悪行こそがタッカーの死を招いていた。


タッカーの死体に対して「おとうさん」と呼びかけて涙するキメラの姿が…ああああ やっぱりキメラの声には違和感があるのだが、鼻先でタッカーの指に触れる仕草が、人間の体だったら手で触れようとするところだったのかなとかそんな妄想をさせてあああ


キメラの件も事前に知っていた様子のスカーは「哀れ」だからとキメラをも殺害する。タッカーの顔面を破壊するところはけっこう派手に描写されていたが、こちらは雷にまぎれるようにして描かれず。
が、キメラの死体はカメラが引き気味だがハッキリと描かれる。漫画だと、なんか遠慮したような感じでキメラの死体は画面の端で少し描かれただけだったから、そんなにグロい絵面とかではないのだが放送当時は衝撃をうけた。タッカーとキメラとでは、死体が反対方向を向いているというもああああああ

「神よ 今ふたつの魂があなたの元へ帰りました その広き懐に彼らをむかえ入れ 哀れな魂に安息と救いを与えたまえ」
スカーの指す「ふたつの魂」は「タッカーとニーナ」だとしばらく思っていたのだが、他の人が「あれはニーナとアレキサンダーを指している」と書いているのを見て目から鱗がこぼれる思いだった。
「ふたり」ではなく「ふたつ」だから確かにその方がしっくりくる。
キリスト教などは「畜生には魂がない」としているが、スカーの信仰するイシュヴァラ神はそうではないのかな。イシュヴァラの「広き懐」は動物をも受け入れるが、罪人は受け入れない、そう定義されているのだろうか。
死んだらみんな仏、みたいなノリの考えなのかもしれないが、憎しみをこめて殺したタッカーをも「哀れな魂」と称するのは引っ掛かりがあったのでスッキリした。

最後、スカーは初めてサングラスを外し、赤い目を視聴者に対して露わにする。
せっかくのフルカラーの媒体なんだから、ここの赤色はもっと鮮やかに描いても良かったと思う。これでは茶色のようで、あまりインパクトがない。だがイケメンに描いてくれているのでよし。


ああ、スタッフに鬼畜が混じっているとしか思えないぐらいニーナの可愛さがやたらと増幅されアピールされた回だった。
これからも作中では色んな人や、人のようなものが錬金術に関わって死んでいくが、軍属でも裏社会に通じているわけでもない、純粋な一般人が死ぬ事は少ない。エルリック兄弟と親しい間柄の人に関して言えば皆無だった。ターニングポイントとして重要な話だが、この話だけ見ると本当に救いがない。


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