「荒川弘イラスト集 FULLMETAL ALCHEMIST3」の感想


アニメイト限定のケースに既に納めた上で販売されていた。


以下ネタバレあり


書き下ろしは、体を取り戻してから数年後といった感じのエドとアルだった。最終回掲載時のガンガン付録の時計の、図柄の候補だったもの。
対称的な構図で椅子に腰かける二人が描かれており、きっちりした服装で両者共に紳士オーラが出ていてイケメンだった。
試験管、インク、紙、マグカップの横に並んでいるのは皿と箸だろうか。並びがカオス。ご飯食べつつ研究しつつ、研究の記録を書き留めていたのか。
シーサーっぽい置物などは明らかにエドの趣味だ。舞台は、改めてリゼンブールにでも建てた兄弟の新居か、仕事場だろうか。
エドは手袋を両手にはめているが、右手首のあたりは生身の色。
エドは懐中時計を持っているが、国家錬金術師の銀時計とはまた違ったものみたいだ。図柄がなく無地であるし。
本編で全てが終わった後、エドは銀時計を返上したのだろうか、していないのだろうか。


表紙はエド一人だけかと思っていたが、裏に他に四人がいた。ホーエンハイムマスタング、リン(服装はグリリン時のものだが顔がリン)、アル、アレックス。女キャラがいなくて男キャラまみれだ。わりとハツラツ(?)とした表情の面々の中でマスタングだけ憂えたような表情。


他の作家のものにも言える事だが、画集はインクの質感というか、塗り重ねた跡などがわかりやすく「この絵って人間が描いてたんだな」と当たり前の事が改めて実感できる。
現代の人間は「重機のない時代に人間の力だけでピラミッドつくれるとか古代人すげー」と思ったりするが、絵を描けない人間からすると、画集出せるほどに何枚も絵を描き続けている人も同じぐらいとんでもない存在に思える。


各イラストについて荒川氏がコメントをつけていたが、その中で気になるものがいくつか。


アニメDVD/BDの2巻初回版特典BOX用イラスト(マスタングとリザのツーショット)へのコメント
連載が終わった後、ファンレターで「大佐と中尉は結婚しないのか?」的な質問がけっこう来ました。
結婚しちゃうと、軍の規則で”上司とその補佐”ではいられなくなっちゃうんだよぅ。
これは背中を見てもらうため結婚するわけにはいかないものの、二人の関係自体は結婚してもおかしくないようなものって事なんだろうか。
マスタングとリザの関係性に恋愛要素を感じる人はけっこう多くいると思われるが、本編で二人が男女として思いあっている事を示す確定的な描写はなかった。が、これは作者公認になったという事なの……か……? 幾重ものカップル脳フィルターのせいでそういう風に読めてしまうだけなんだろうか……
イラスト自体は改めて見ると、マスタングの厚着っぷりとリザの薄着っぷりの差がすごいなと思った。マスタングは軍服の上にコート、更に手袋をつけているが、リザは多分下着の上に半袖シャツを一枚着ているだけ。リザの腕の筋肉のラインがかっこいい。非戦闘員のウィンリィの腕はラインがまっすぐだが、リザは筋肉が発達してる感じだ。萌えるね。


筋肉といえば、エドのイラストに「筋肉つけすぎた」と書かれていたり、グリリンのイラストに「リンがグリリンになってからうっかり筋肉をつけすぎてしまうことがよくありました」と書かれていたりした。
グリリン化してかのムキムキ具合はグリード―ピングとか言われていたりしたが、ついうっかりでそうしていたのかw 設定の上では、グリリン化してからも体格に変化はないことになっているんだろうか。


エンヴィーの絵と、エドの絵とにそれぞれついていたコメントが印象的だった。
エンヴィー死亡後に描いたエンヴィーのイラストは、険がなく目がギラギラしていない顔つきになったらしい。連載終了後に描いたエドのイラストも、目つきがギラギラせず優しいものになってしまったらしい。両者ともよく描き直したとも。
エドは本編で目的を果たせたから、優しい目つきにしてしまうというのは良い事だと思えるが、エンヴィーについては切ないところだ。生前のエンヴィーは、ギラギラした目で嫌がらせを楽しんでいるところか、カリカリしているところばかりだったが、最期に煩わしさから解放されたのだろうな。


優しい目つきのエドといえば、2011カレンダー書き下ろしイラストのもの。
体を取り戻した後のエドが、旅先から送ってきた写真たち……という絵だが、ここのエドの表情は優しい。かつてのエドは旅先からろくに連絡を取っていなかったが、この旅では頻繁に連絡しているのかもしれないなー
エドはあえてウィンリィのスパナに当たってやっているのだと思う。
という作者コメントがそのイラストにはついていた。 「こんな痛みも歓迎じゃん」という事かw


メイとイズミは髪を細かく編んでいるが、大判イラストだと髪の線というか髪への光の入れ方というか、髪の描写が細かくて面白い。


キャラクター人気投票ベスト10のイラストについての作者コメント。
>最終回後の外伝を描いた時のアンケートでは、小学生票だけを集めたら、リンの人気が大佐の上を行ってました!
マスタングは女性票が多いと、最後の人気投票掲載時のガンガンに書かれていたが、女性の中でも更に大人からの人気が多いイメージ。子供にはマスタングの抱えるものなどは少し難しいかもしれない。自分も子供の頃から読んでたはずだがどうだったっけな、そもそもまだその頃はマスタングの過去についてはあまり触れられていなかったか。
リンは「主人公と同世代の友人ポジション」だから子供から支持を受けやすそうだ。「友人」とはまた違う気もするが、そう遠くもないかな。
アニメスタッフが女性キャラの人気について「男性スタッフはランファン好きが多く、女性スタッフはリザ好きが多い」とどこかで書いていたのをふと思い出した。製作日記ブログだっただろうか。性別、年代別のキャラ人気表などがあったら興味深い。


単行本14巻表紙のイラストは、血が染みているエド機械鎧や、アルに抱えられながら抵抗を試みているような様子のツン状態のメイとかが好きだ。
テレフォンカード用イラストは、私服の軍人たちが爽やかだ。フュリーも私服姿だが、こいつが本編で私腹を披露した事ってあっただろうか。リザは私服のスカート率が本当に高い。アルはブラハを足に乗せているが、この組み合わせは本編では確かなかったなー小さくもふもふしているものなら猫だけじゃなく犬も好きなんだろうか。
69話扉絵のマスタング組とオリヴィエ組の集合絵も好きだ。マスタングとオリヴィエは色々と対になっている感じで良い。男と女、黒髪と金髪、短髪と長髪、辺境から中央に来た者と中央から辺境へ行った者、後ろ盾のないところから成り上がった者と軍人家系でそうなるべく育てられたであろう者。どちらもかっこいい。キャラたちはカメラを睨みつけるような目つきだが、サングラスをつけていて目線のわからないマイルズも睨み中なんだろうか。


巻末漫画はカラーイラストについてと、連載中に生まれた荒川氏の長男について。
カラーイラストのところでは、今回コラボイラストが収録されていた『ソウルイーター』の作者の大久保氏が登場した。
長男についてのところは衝撃的なことに 長 男 が 人 間 だ っ た 
百姓貴族では一家全員牛だったのに、荒川氏の長男は人間なのか……そのうち色々と生えてきて牛になるんだろうか。おおお……