『鋼の錬金術師CHRONICLE』の感想

年表が細かい。マスタングは時間をかけてコツコツ昇進していったようだが、リンは帰国してその年のうちに即位したのか。そこらへんはインタビューなどでも触れられていた。
プライドとラストの誕生から、それ以後のホムンクルスたちの誕生までに時期が空いているのはなんでだろう。


収録4コマはアニメDVDに付属したものやガイドブックに掲載されていたもので、単行本末尾のものはなし。

キャラ紹介とストーリーダイジェスト紹介が多い。あとスクエニ関係の作家陣の寄稿イラストが大量。
書き下ろしとかお蔵入りになっているラフ絵とか、そういう作者自身が書いていて未見のものがもうちょっとほしかった。今までのガイドブックはあまりまじめに読んでいなかったのだが、まあ今までもこんな感じだったしこんなものかな。


書き下ろしのカバーイラストが楽しめるようにと、裏表紙のバーコード部分ははがせる仕様になっていた。カバー裏になにかおまけあるか?と思ったがなにもなかったのは残念。






書き下ろしコミックは、ページ数にしておよそ7ページで、巻末おまけ4コマと同じノリ。
真面目なサイドストーリーやその後の話がくるかと期待していたのになんというフィッシング!
100%ギャグな調子で、最終回後のマスタング・アル・エド・ヨキの姿が4コマで描かれていた。ヨキの人生波乱万丈すぎる。
メイとリンの服に貼られているスクリーントーン、本編ではこんな華やかな柄は出てこなかったなー。シンの正装は華やか柄の服が多いのだろうか、アメストリスの豪奢な服は、柄方面ではなくヒラヒラさ方面に発達しているイメージ。
第一回人気投票についてのお父様ネタが面白かった。姿が出る前から票が入っていたのか。





キャラ紹介のページ数はそれぞれ、
4P エド、アル、マスタング
3P リン
2P ホーエンハイム、お父様
1P スカー、ウィンリィホークアイ、オリヴィエ、ラース
1/2P ヒューズ、ハボック、キンブリー、ランファン、フー、プライド、エンヴィー
1/4P ブレダ、ファルマン、フュリー、ロス、マルコー、ノックス、マイルズ、バッカニア、アレックス、グラマン、ハインケル、ダリウス、ジェルソ、ザンパノ、メイ、ヨキ、イズミ、ピナコ、ラスト、グラトニー、スロウス、グリード
その他のキャラは1/32Pで紹介されていた。メイさんとアレックスさんとイズミさんが思いのほか扱い小さい件について。
それぞれキャッチコピーみたいなのがつけられているのだが、アルの「重い鎧を脱ぎ捨て、世界へ羽ばたく錬金術師」というのが良かった。
リザの「闇を撃ち抜く、誇り高き「鷹の目」」と、キンブリーの「美学に徹し、消えた紅蓮の錬金術師」は、ちょっとかっこつけすぎw


お父様紹介ページは、一番よく出る老お父様ではなく若お父様の方が大きい扱い。若いイケメンの方が需要があるからかw
お父様の外見がホーエンハイムより老けている事には諸説あったが、「皮袋と中身が合っていないからです」との作者コメントがあった。生命力ある皮膚ではなく、ただの皮袋だから弛んだとかか。
お父様は、クセルクセス王からのお達しがなければ、大望を抱く事もなかったみたいだ。王を責めるようなコメントがあった。最初からバリバリ野心を抱いていたのかと思っていた。王からの命令を受けた際も「このチャンスを待ってたぜ!」という心境だったのかと。
不老不死という王の欲望を見せられ触発される事がなければ、お父様はフラスコの中で生涯を終える事にも諦めをつけられたんだろうか。


リザへの作者コメントの「禁欲的で自分を縛りつけているような人」にエロスを感じた。作者コメントは全員につけてほしかったなー。扱いが小さいキャラに対しては、スペースがないのかついていない。
オリヴィエへのコメントに「特におじさんに人気があるんですよね(笑)」とあったが、それは作中のおじさんキャラにという意味か、リアルおじさん読者にという意味かどちらだろう。




高橋留美子氏のイラストメッセージは、一番大きく描かれているのがオリヴィエだったw
アームストロング姉弟が好きだとの事。小さくアレックス・エド・アル・グラトニー・マスタング・リザも描かれていた。
呼ばれたのでよく知らないけど描いてみた、という感じではなく、ちゃんと中身も知ってくれているようで嬉しかった。



荒木飛呂彦氏との対談は、なんとなく荒川氏のテンションが高いような。インタビューではなく対談だから、受け身で答えるだけではなく荒川氏が積極的に話している。
Twitterについての話題が出たが、両者共にやる予定はないとの事。面白い事を思いついたらそれをつぶやきにするのではなく、漫画の中で生かしたいそうだ。
あと10年ぐらいしたらシルクロードに行って、その事を漫画にしたいそうだ。10年後も漫画を描いていたいという事か。シルクロード漫画かー、エッセイではなくストーリー物でかな。


中島かずき氏との対談。荒木氏同様に、荒川氏が前からファンだった方だそうで、こちらもテンションが高い気がするw
荒川氏は、最終回について、ハッピーエンドすぎる事へのブーイングがくるかもと覚悟して描いたそうだ。もっと痛みある結末の方が望まれているかもしれないと葛藤したそうだ。
238ページでのインタビューによると、考えていた結末にはいくつかのパターンがあり、アルが体を取り戻すというのは決定事項だったそうだが「元の身体に戻れはしますが、寿命が縮まって、長く生きられない」というパターンもあったとの事。でも、兄弟に世の中への恩返しの旅をしてもらうためには、長生きしてもらう必要があるとボツにした。
あれだけ痩せ細れば、内臓機能に後遺症が残りかねないなと、体が出た当時は思ったなー。エドの享年などはギャグ混じりとはいえ出ていたが、アルの老後は(多分)描かれていないから、最終回の段階では元気でも、若死にするかもなーと妄想した事があった。でも、アルは長生きしてくれるのか。良かった。




単独インタビューは、今までの雑誌インタビューとかぶっている内容がけっこう多かったが、自分が今まで見た事ない新たなコメントなども色々あった。


鎧のアルの体重は十数キロほどだそうだ。
余裕でお姫様抱っこできるぐらいの重さなのか……。


マスタングはイケメン扱いされる事があるがそうではなく、容姿はそこそこ、東洋系の顔立ち、背もそれほど高くなく、モテるのは女性へのマメさの賜物。
「こういう感じなんじゃないか」という一般読者の意見としてこういう設定を見かけた事はあるが、公式設定として書かれているのは自分が見たのではこれが初めてかな。



エンヴィーがエドに嫉妬の意味を当てられたシーンについて「屈辱と嬉しさで、もう心の中はぐちゃぐちゃだったでしょう」とコメントされていた。嬉しさもあったのか。
ホムンクルスのうち、グリードも生き残らせようかと思っていた時期もあったそうだ。
プライドが生存確定した際は、グリードも生き残りそうだと予想してたなー。ホムンクルスのうち、味方サイドについたグリードだけ生き残らせるのはよろしくないが、歯牙の抜かれた身ではあるが、一応敵サイドであるプライドも生き残らせた上でなら、なんというかフェアかなーと。


アニメ最終回では、アルの描写について荒川氏がオーダーを入れたとの事。
漫画でのアルは「一生を研究に捧げそうな、そんな悲壮感が感じられなくもない」描写だったが、アニメではもうちょっと明るい描写にするよう頼んだそうだ。
アニメ版の最終回は全体的に漫画よりも明るくなっていたなー、軽くなった、と残念がる意見も見たが。
マスタングの描写については、好みで言えば漫画の方が好きだが、アニメ版も良かった。漫画のマスタングは戦いの直後に、同じ辛い過去を背負った人たちとの交流によって今後の生き方を決めていた。一方、アニメのマスタングは、戦いからの一週間の中で、過去を共有する事のない、イシュヴァール戦の後で出会った仲間たちとの交流の中でこそ生き方を決めた(リザは例外だが)。背中を向けてしまっていた過去に立ちかえる事でまた歩き出せた漫画の展開より、アニメの方は苦さが薄れたが、真っ直ぐに未来に向かっている爽やかさが良かった。





もうちょっと薄くして、その分値段も下げて良かったんじゃないかと思ったりもしたが、面白い部分もありよかった。
ラストページの、鎧のアルの腕と、機械鎧エドの腕が突き出されているイラストがかっこよかった。