第2話「はじまりの日」感想(Bパート)

Bパートからが特に好きなのでやっと辿りつけたー
Aパート感想からの続き。


以下、2話の時点ではわからないネタバレあり。


Aパート感想で取りこぼしていた部分について。
アニメではカットされたが漫画では、死を免れないと覚悟した病床のトリシャが「お父さんのお金」を残していくからそれで二人仲良くやってね、といった発言を息子たちに残していた。
わけあってとはいえ去って行った父と、死んでいく母が子供に残せるものといえばお金ぐらいしかない。
家を出て行ったホーエンハイムがちゃんと妻子のためにお金を残していたというのは重要なポイントだったので、そこを抜いてしまったのは残念だった。ホーエンハイムは一見すると浮世離れした人物なだけに、銭をキチンと稼いでキチンと残して行ったという現実的な行動もできていた人だとわかる貴重なエピソードだった。
ホーエンハイムの妻子への愛情といったものは後にじっくり語られていく。でも、形なき愛情では食って行けず、お金がなければトリシャが女手一つで子供二人を育てていくのは難しい。
描写されなかっただけでアニメの世界でもホーエンハイムが残したお金というのはあったと思われるが、きっちり言葉にしてほしかった。



アイキャッチAはアルフォンス・エルリックの10歳時。
アイキャッチBはエドワード・エルリックの11歳時。
20話のアイキャッチとは対になっている。


アルの方ではフォーメドゥーアーケミストゥなし、エドの方ではあり。
1話目の現在の二人の姿が映るアイキャッチではエド→アルの順だったが、2話目と20話目ではアル→エドになっている。

Bパート冒頭は、現在のマスタングとヒューズの会話から始まる。
「今度会った時には准将ぐらいになってろよ」
という気軽なヒューズの発言が後の展開を知っていると大変鬱なことに。
マスタングの対ヒューズ専用一人称の「俺」はなんか聞いていてむずがゆいw
ヒューズは子持ちなせいか、あくまでもエルリック兄弟は子供だと、保護者の視点で語る。
でもマスタングにとってはエルリック兄弟は自分と同じ錬金術師、そして同じような地獄を見た者だとして対等な存在である、という対比が成される。
ここの会話はアニメオリジナルだったかな?

回想に移り、中佐だった頃のマスタングと少尉だった頃のリザ登場。短髪リザは大変かわいい。

背景を見るに、季節は秋。アメストリスという架空の国が舞台ではあるが、季節の移り変わりなどは現代日本と大体同じだと思われる。
兄弟が人体錬成を行ったのは、直前の描写から見ると、まだ葉が青々とした夏の頃だった。
マスタングたちが訪れたのは、人体錬成が行ってから数週間から数ヵ月ほどはたってからのようだ。
人体錬成〜マスタング来訪までの正確な経過日数はガイドブックか何かにでも書いてあるかな? 漠然と、数日程度のものだと思っていたので、夏の季節が秋のものに変わるほど間が空いていたというのは意外だった。



死んだような目をしているエド
アルの魂を定着させる時の強いまなざしは失せている。あの時はただ必死だったろうが、アルの魂を取り戻し、自分の手足の出血も治まりとりあえず落ち着き始めた段階になって、絶望的な現状に押しつぶされてしまったんだろうか。
こんな目をした手足のない少年の胸倉を掴むマスタングさんマジ怖いっす。
失敗したとはいえ、相手は人体錬成の理論を築きあげた錬金術師。その意識から、あくまでもこの段階からマスタングにとってエルリック兄弟は対等な存在なんだろうな。だから容赦がない。性格的にマスタングがけっこう地は熱血な人のせいもあるか。
激昂するマスタングを止めようとするアルもまた、エドと同じく目に光がない。小刻みに震える姿と泣きそうな声が痛々しくも可愛い。ごつい鎧から可愛い声が飛び出した時のマスタングの心境は大変複雑だったろうなーw


手足を失ってからマスタングがくるまでの間、エドはアルやロックベル家の面々らとどんな会話を交わしていたんだろう。
子供だし、大量出血と痛みのせいで意識不明の状態が長引き、マスタングがくる数日前までずっと昏倒状態だった可能性もある。
廃人みたいな表情だった事から見るに、意識が戻ったのが遅くても早くても、目覚めて以来ずっと周囲から意識を隔絶させて呆けていたのかもしれない。マスタングの問いかけに対してエドは、終始うんともすんとも返さない。アルたちが何を言っても、同じように無言を貫き続けていたのかもしれない。

「そこに可能性があるなら前へ進むべきだ。それがたとえ泥の川だったとしても」
マスタングは今まさに泥の河を渡っている最中の人。マスタングの言葉によって、エドは死んだような目から火のついた目へと変わる。
アルたちが言葉をかけていたとしたら、それは「エドは悪くない」といった慰めの言葉ばかりだったと思う。
マスタングはそうではなかった。与えたのは慰めではなく希望で、それは絶望していたエドが一番欲しかったもの。
マスタングが来なかったとしても、時間の流れがエドを奮いたたせたとは思わない。アルは人体錬成について主導したという立場ではないからかエドほどは病んでいなかったが、当事者という負い目を持っていたため、あの状態のエドを奮いたたせる言葉はかけられなかったと思う。マスタングの存在あってこそ、エドとアルは立ち上がれた。




エドとアルにとってマスタングのように、ウィンリィにとってのリザの存在も大きかった。
ウィンリィは、軍に招来された先の戦場で両親が死亡した事で、軍そのものを嫌っていた。それは、個人としてのリザへも向けられるものだった。だが、リザの中にある軍人としての思いは「守るべき人」のために動きたいという、一般人の少女であるウィンリィが周囲の人に抱いている感情となんら変わらないものだった。
リザは守るべき人のために軍人になった。ウィンリィにはそんな事はできない。でも、彼女だからこそ出来る事としてエド機械鎧の整備があった。
ウィンリィ機械鎧が馴染んだ後のエドに「あんたが元の体に戻るまでサポートするって決めたんだから」と豪語する。
この言葉はリザに出会っていなければ出てこなかったものだと思う。
リザとの出会いで軍へ抱いていた嫌悪感を払拭できなければ、ウィンリィエドとアルの旅立ちを「両親に続いてまた軍に連れて行かれてしまった」としか思えなかっただろう。泣き虫なところがあるし、旅立つ二人を笑顔で見送る事も出来ず、泣きついて旅をやめさせようとするような子になっていたかもしれない。エド国家錬金術師になる事も、徹底的に反対したかもしれない。
ウィンリィが「旅」を完全肯定できるようになったのは最終回で、それまでは「やめてほしい」という気持ちも複雑に入り乱れていたようだが、それでも「サポートしたい(旅を応援したい」という思いの方が前面に出るようになったのは、リザが子供相手であっても真摯に話してくれたから。子供相手でも本音を直球、という点ではマスタングもリザも同じだなー

2話は真理関連のシーンや、火のついた目になるところも好きだが、このシーンも大変好き。
ウィンリィは会話の中でリザに影響を受けた。リザの方は、ウィンリィに名を告げられ握手を求められてから、初めてウィンリィという個人を印象に留めたのだと思う。
イシュヴァール殲滅戦の中で両親を奪われたウィンリィは、一方的な被害者といえる。狙撃手として高みから敵を打ち続けたリザは一方的な加害者といえる(別にリザがウィンリィの両親殺したわけではないが)。そんな二人が心を通わせ合った瞬間。こういう関係好きだ。



あと、リザの隣に座る時のウィンリィの動作が可愛くて好きだ。リザとの間にちょっと距離を空けるため後退→ソファの方を振り返りソファの位置を確認→着席、の流れがナチュラル可愛い。
リザとウィンリィの会話についてはここではけっこうカットされていて、後に『シンプルな人々』で補間されていたが、そちらもよかった。



エド機械鎧をつけるための手術を受けるところ。

機械鎧は人間に凹のパーツを埋め込み、そこに凸である腕(もしくは足)パーツをはめこむという仕組みになっているようだが、凹パーツを埋め込む作業の時はより医療に近いからウィンリィとピナコはこの格好なのかな。凹パーツ設置後の作業はけっこうラフな格好で行うのが普通のようだが。
エプロンっぽい姿で二人とも可愛い。


手術を行ってから一年たち、エドは12歳になる。
1年の間に髪を伸ばしてお馴染みの姿になったエド
機械鎧は便利な品物であれど生身の手指ほど精緻な動きができない。普段から指の動きを訓練するため、エドは髪を伸ばして毎日みつあみをつくるようになった」と聞いた事があるが、これは公式設定なんだろうか? 本編ではなかったと思うがどこかにあったっけな。ガイドブックネタ? 考察ネタ? 聞いてなるほどなーと思った。
アルと組手に励むエドがはだしなのが気になる。機械鎧での足場の感触みたいなのを感じようとしたんだろうか。



エド国家錬金術師試験に挑む事になり、舞台はリゼンブールからセントラルに移る。

中央司令部が登場するたびに思うが、天井が高い。ロックベル家と比べるとわかりやすい。天井の高い場所って好きなのでときめく。


国家錬金術師試験の後のエドマスタングのやりとりはカット。髪を伸ばしている最中のリザまでカット……ぐぬぬ
その代わりにリゼンブールでエドの帰りを待つウィンリィとアルの姿が挿入される。アルは一緒にセントラルまでついていかなかったんだなー

ウィンリィは既にピアスをつけている。ピアスをつけているリザに影響された心を表わすように。
アルのちょんまげもそうだが、ここでの髪が風にたなびく様子がきれいだ。


そうして「鋼の錬金術師」誕生……だが……

「いいね その重っ苦しい感じ。背負ってやろうじゃねーの」
と名付けられた銘に対してエドがこう返す名シーン(ギャグではない)なのに、ちょっと作画がよろしくない。
どういう表情を浮かべているか、といったニュアンスなどが外れているわけではないが、うーんなんというか、口の角ばり方とか、眉根の感じなどが大味な印象だ。



これにてエドの回想終了。

面白いのは、回想開始前も終了後もアルが同じように「兄さん」と、同じ角度で映るエドに対して呼びかけるところ。
回想に誘うのも現実に引き戻すのもアルの役割なんだなー


オリジナルの第1話、エピソード順をかなり変えて2話に持ってきた過去回に続き、次の第3話ではやっと漫画の第1話がくる。