RAIDEN-18 エピソード1の感想

http://club.shogakukan.co.jp/magazine/SH_CSNDY/raidenjuuh_001/detail
こちらで無料公開されていたのを読んだ。
ジャンル名(?)が「超外道死体改造コメディ」というのはなかなかはちきれてるw
でも、あくまでも利用する死体は「既に死んだものをリサイクルする」だけで、利用するために誰かを殺すのはだめ、という理屈が広く認識されている世界なので、それほど外道感はなかった。
ゾンビ屋れい子」「血まみれスケバンチェーンソー」など、ゾンビやら死体改造やらを多く扱っている三家本礼作品のノリを少し思いだせる作品だった。あそこまで乳と内臓にまみれたエログロ作品ではないが、筋肉にはまみれていたw
エッセイ作品である「百姓貴族」を除き、「鋼の錬金術師」以外での荒川弘のストーリー作品を読むのはこれが初めてだった。


以下は本編ネタバレなどあり。


創作世界では有名な「フランケンシュタインの怪物」よろしく、死体をつなぎあわせて造られたクリーチャー「雷電18号」が雷鳴と共に目覚めるところから始まる。
元ネタであるフランケンシュタインの怪物も、雷による電気エネルギーによって命を宿らせていた。「雷電」という名前はその部分にもかけられているのかもしれない。
雷電18号の左腕パーツは相撲取りの雷電号のものだそうなので、作中での名前の由来はそっちだろうか。
実際に読む前から「RAIDEN-18は作者が好きな相撲取りである雷電爲右エ門を元ネタにしている」と聞いていたが、単にモチーフにするだけでなく、実際に雷電の左腕を取りつけさせているという設定にしているとは思わなかった。子孫に怒られたりしないだろうか……実在人物に関してはエピソード2や3でもっとギリギリなネタがあったがw
雷電爲右エ門には左利き説があるから、雷電18号が受け継いだパーツは左腕になったんだろうなー


元ネタの「フランケンシュタインの怪物」は、フランケンシュタイン氏によって造られた人造人間であるからそう呼ばれ、固有の名前は与えられなかった。名もなくつがいになる存在もなく、悲劇的な最期を遂げる人物だった。ちょっと「鋼の錬金術師」のお父様と重なる部分がある。フランケンシュタインの怪物を元ネタにしながらも、雷電18号にはちゃんと最初に名前が与えられて良かった良かった。自然に生を受けたものではなく、自我の形成がしにくい不自然な生き物には「個体としての名を与えられる」という行為は重要なものだと思う。
「18号」というと、いかにも識別のためだけに適当につけられた感も漂うが。
作中では単に製造の順番の問題で「18号」とつけられていたが、何か元ネタがあったりするんだろうか?フランケンシュタインが「18」世紀の小説だからとかはあんまり関係なさそうだが。なにか由来あるのかなー


予告で画像を見た時、雷電18号に比べて、彼を生みだした科学者であるタチバナ博士の方はあまり容姿がパッとしないなーなどと思ったが、下着がドロワーズだというだけで萌えた。あとやっぱり漫画のキャラは、一枚絵だけでなく、作中で話したり表情変えたりしてるところを見てこそ魅力を感じるという部分がある。
タチバナ博士はもっと、どもったりするような内向的オタっキー少女で、雷電18号はクールなキャラかと思っていたが、両者共に、言いたい事をズバズバ発言する直情的で表情がよく変わるキャラだった。
雷電18号はおっさんキャラだと思っていたので、顔つきが若いのも意外であった。


人命がとにかく軽い作品だった。多分21グラムぐらいしかないw
死体研究に励みすぎて過労で自らも死体になった人がサクッとクリーチャーとして甦ったり、
ガンで死亡したが「墓地が高いから」という理由でクリーチャーになったおじいさんが、戦いに巻き込まれて小さいコマであっさり二度目の死を迎えていたりw
いや、おじいさんは胴体分断されて内臓出していたものの、意識はまだあったし、あれで死亡というわけでもないのだろうか。手足がとれても内臓出ても、また接合すればいいだけで、クリーチャーたちはほぼ不死になってるのかな? そもそもが死者であるし「生きている」といえるのかも謎な感じだが。
雷電18号は「いくらクリーチャーといえども首を落とせば死ぬだろう」といった事を言っていたが、ドクダミさん(名前がないので仮称)は首がころっと落ちても平気そうだったので、実際にはあれは雷電18号の推測にすぎず、首を落としても必ず死ぬというわけではないのかな。個体差とかもあるのかもしれないが。
雷電18号は脳みそさえも色んな人の寄せ集めで出来ているので、人格はほぼオリジナルのものになっているようだが、ドクダミさんやおじいさんは生前そのままの人格っぽい。錬金術では成し得なかった死者の復活がこの世界では当たり前のもののようになってるんだなーw
作者つながりで、鋼の錬金術師における「死者はどう手を尽くそうと甦らない」という死生観を引きずりながら読むと拍子抜けするかもしれないが、このお気楽さはなかなか読んでいて心地よかった。
雷電18号はシリアスに「己の尊厳と自由のために闘う!」という発言を見せたりもしていたし、これからの話の転がし方によっては、どシリアスに「生命とはなんぞや?」といった方向に進める事もできるかもしれないが、ゆるいノリで進めていってほしいな。でも重苦しく悲哀に満ちたシリアスRAIDEN-18というのもそれはそれで面白そうだw


性的な方面もわりとあけっぴろげだった。
雷電18号が自らの股間のサイズをチェックして感動の涙(?)を流すなど。
……クリーチャーに生殖能力はあるのだろうか。甦った死者や人造人間などには、その手の機能がないのがよくある設定ではあるが、雷電18号にわざわざブツがついているという事はひょっとあしてあるのか?
それともタチバナ博士の愛玩用に設置されたのだろうか……せっかくの青年誌掲載作品だし、そっち方面に掘り下げた話にしてくれてもかまわない、むしろそっち方面に進んでくれたらとても嬉しいと言ってみよう。


ジュティーム2号の名前の由来が「2号さんだから」というのもひどいww
作者つながりで読んだ小さいお友達には「2号ってどういう意味?」とネタが通じるか通じないかギリギリのところだ。あまり最近では使わない言いまわしであるし。
ジュティーム2号の外見や能力などが好きなのだが、エピソード1限定のキャラで、もう再登場はしないのだろうか。体粉砕されちゃった?
金属加工された腕の骨を刃のようにして扱う、とかえらいかっこよかった。
クリーチャーらは雷電18号以外も多分、みな雷によって目覚め、以降は電気エネルギーによって活動するみたいだ。その体内の電気を骨に放出する事で電撃メスのようにして扱うというジュティーム2号の能力は上手い事考えられてるなー
雷電18号が上手投げをする時も電撃が走るような描写がされていたが、クリーチャーたちはみんな電気属性なんだろうか。水場には弱かったりするんだろうか。雨の日は無能なんだろうか。


細かい部分の書き込みが面白い。
・全部読み終えたから改めて1ページ目を読むと、エピソード1の落ちである○○の墓がちゃんと最初から登場している事に驚かされるw
・「強力はみがき クチナシ歯科」と書かれた箱はなんなんだろう……? 目覚めさせる前にタチバナ博士が事前に雷電18号の歯を磨いておいたのかな。
雷電18号が読んでいる「フランケンシュタイン」の表紙で、おどろおどろしい顔したフランケンシュタインピースサインを決めているw
・その雷電18号の後ろの本棚にある「死体全集」は少なくとも18巻まで出ているようだが、そんなにも何が書かれているんだ……
・その他の本「がばがばわかる人体」「ぞくぞくわかる人体」「今日の解剖 上下」「解剖のスベテ」「フランケン用語集」「フランケン解体新書」「一日でわかる人体」 他にも色々書き込んであるが小さくてわからない。作者ノリノリだ。
・「木瓜敬老會」、はじめはサラッと見逃していたが、「木瓜」の読みは「ボケ」だ。ボケ敬老會ってブラックすぎるw
・スズラン、グスベリ、ドクダミ、ヒイラギ、ヤブコウジ、アマナツ、ツルクサ、と植物関係の名前が多い。タチバナもそういえば植物だ。
・クリーチャー選手権会場に「土葬ダメ!ゼッタイ」と看板が立てられているが、この世界では火葬が主だった埋葬方法なんだろうか。それとも、クリーチャーとしてリサイクルしたいから燃やすなんてもったいない!という意味で、あの場だからこそ貼り出されたものにすぎないのだろうか。
・「美味!関西風うで焼き」というのぼりが立てられているが「うで」って人間の「腕」? カニバリズムもアリな世界なのか?
・「鮮血ジュース」というのもあったがやはりカニバリズムか? 人間が飲むものではなく、クリーチャーらの潤滑油みたいな扱いなんだろうか。
・縫合痕っぽいものがある犬猫が背景にいたが、人間以外のクリーチャーもいるのかな。ニーナでは果たせなかった獣耳少女キメラが登場する余地もあるだろうか。


エピソード1、2をまとめて書こうと思ったが思ったよりも1だけで書きたい事が多かったので、2はまた次回。
シリーズがこれからも続いていってくれるといいな。