1クール目EDの感想

歌はシドの「嘘」。
映像は絵本風というか子供のお絵かき風というか。5クール中の2,3番目ぐらいならともかく、1番目でこういう画風にしたのは冒険だった気がする。


以下、EDだけではわからないネタバレなどあり。



歌をフルで聞いたら、失恋ソングだった事に驚愕した。
wikipediaに、原作を読んだ上でテーマである兄弟を恋愛に置き換えて作詞した書かれていたが、兄弟愛を恋愛にって、ものすごい置き替え方だ。
EDでは使われていないが、サビに「二人戻れない」というフレーズがあり、本編の内容と照らし合わせると不吉すぎた。
アニメサイズ用に切り貼りしたら本編に合うように意識しつつも、フルバージョンではそんなの関係ないぜ!という感じだったんだろうか。
特に関係ないが、幼児期に生命保険のCMで聞いた中島みゆきの『ファイト!』を、明るく前向きな歌だと思っていたのだが、成長してからフルで聞いたらけっこう重い曲でびっくりした事を思い出した。前向きではあるが。


映像は全体的に、絵本風の絵柄で背景もあまり書き込んでいなくて、その分「こういう場所の背景はこういう色」という制約を受けないのか、背景が色とりどりだった。

現れたエド機械鎧の片手を挙げ、表に向けていた手のひらを裏返すと同時に背景が歌詞通りの「茜色」になる、このタイミングが好きだ。
OPのラスト1カットの、エルリック兄弟と思われる人影が茜色の空をバックに佇むところを思いだす。なんとなくOP最後のところは朝焼け、EDは夕焼けな気がする。特に根拠はない。



もう一つOPの方を思いだしたのは「初夏の風が包む」という歌詞と共に草が飛んでいくところ。
OPで、画面を切り替える際に大量の草が飛んでいた様子が浮かんだ。
示し合わせたわけでもないらしいのに重なったのは、兄弟の故郷のリゼンブール→田舎→緑いっぱい→葉っぱも飛ぶさ、な感じの発想からだろうか。OPでホーエンハイムが思い返しているのも、EDでエルリック兄弟が思い返しているのもリゼンブールの景色であると思われるし。



こんな風に並べられると思って描いたわけではないかもしれないが、順番に映像を並べるとグラデーションになっていてきれいだ。
ここの画面切り替えでは、表れている物たちが分解され、再構築されるような表現になっている。
EDでの画面切り替え全てがそうなっているわけではなく、後述するが、その場面によって切り替え方法が異なるのが面白かった。パッと別のシーンに移るのではなく、凝っている。楽しんで描いてそう。


次に現れる画面で、組手をするエドとアルがちゃんと礼をしあってから始めるのが良かった。

組手で吹っ飛ばされたエドはそのまま飛び続け、マスタングたちらの横をすり抜けた末にアレックスに受け止められて元来た方向に投げられる。そしてその後に何故か四コマのようなものが……
ウィンリィに身長を馬鹿にされたエドが、アルと合体すればでかいぜーと調子に乗っていたら崖から転落するという話。なんでここでこの四コマなんだろうw
絵だけでもなんとなく内容はわかるが、英語が小さいお友達には読めなさそうでちょっと不親切。
「TA-DA」という擬音は大きいお友達でも意味がわからなくて「DO-DA(どうだ!)の間違えか?」などとちょっと思ったが「パンパカパーン」や「ジャジャーン」のような意味合いらしい。


エドが投げ飛ばされてからしばらくは歌詞を完全に無視した映像だったが「テーブルの上の震えない知らせ待ち続け」で、エルリック兄弟の連絡を待ち続けている様子のウィンリィという歌詞に沿ったイメージの絵になる。

デンの鼻にちょこんとさわるウィンリィが可愛い。ウィンリィとうぃんうぃんしたい。
歌詞は明らかに「携帯電話のバイブ機能」について触れていて、携帯電話のない鋼の錬金術師界にはあわないかもしれないが、連絡を待つという気持ち自体は同じなので、歌詞と映像をシンクロさせてもそれほど違和感はなかった。
黒電話だってテーブルの上に置いといたらりんりん鳴って振動があるよね!とこじつけられなくもない。


ウィンリィのシーンからアルのシーンへ変わる際の切り替え効果が好きだ。

ウィンリィのいる部屋の窓から覗く月は固定されたまま、ウィンリィたちだけが下にスライドしていき、そしてアルのいる部屋へと切り替わる。
ウィンリィが浴びる月光も、アルが浴びる月光も、同じものなんだなーと感じられた。当たり前の事だが「同じ空の下にいる」という表現をしているようでいい。
ウィンリィが兄弟のことを心配する夜に、アルも同じようにウィンリィやピナコのことを思ったりしていたんだろうな。



続いて登場するエドエドの画面にも窓はあるが、角度が違っていて残念ながら同じ月は映らず。
フラメルの紋章、その紋章を背に負ったエド、という風に続く。この時の切り替えは、エドが小さい豆粒みたいになり、その豆粒が紋章に変わるというもの。
豆粒みたいになる表現は別にエドが作中で豆粒扱いされるからではなく、前の方で出てきたアレックスも、退場時には似たような豆粒になっていた。


夜の風景が続いた後、サビにあわせて再び茜色の空が登場。

ここで出てきた猫は、アルの猫好きアピールのためかと思ったが、絵コンテ担当の森井ケンシロウのマスコットキャラ(?)のようなものらしい。公式サイトにもいた。
よく知らない人だったが森井氏も猫好きなのか。



この次の、茜色の空が銀時計の文字盤に変わるという切り替え方が好きだ。
銀時計に文字を刻みつけた日の思い出ごと、銀時計の中に封じ込めたよう。「約束」をしたのが実際に茜色の空のもとかどうかはともかく、茜色の空はいかにも「思い出の風景」といった感じがする。
歌詞の「果たせなかった約束」はフルサイズだと、完全に過去形で、これからも果たしようがないもののように書かれている。
でもEDの中では、前は果たせなかったが今度は果たしにいく、という感じに取れた。
完全なる死者であるトリシャは取り戻せなかったが、アルは今度こそ取り戻して見せるという意味にとってみたらけっこう納得がいったが、こじつけだなー



茜色の空ごと封じられた銀時計だが、閉じられた後の表現が細かい。
錬金術によって蓋が溶接されたというところがちゃんと再現されている。
蓋を完全に一体化させた後、ズームアウトして、青空の下を歩く兄弟の姿が映される。


そして空想落ちw

EDがああいう絵柄なのは全部幼い兄弟が描いたものだからなんですよーという事に。
途中の四コマが英語表記なのは英語圏に暮らすエルリック兄弟作のものだからなんだろうかw
なんで兄弟の空想のお絵かきでしたという落ちなのかよくわからないが、理由を考えるところでもないか。幼い兄弟が可愛くて良し。


1クール目OPと比べると1クール目EDはそれほどハァハァしたわけではないのだが、それでもこのEDも好きだな―と再確認した。
本編中で茜色の空のシーンを見るとEDを思いだす。
1クール目の茜色の空といえば、2話で幼い兄弟が墓場で決意をするところと、ニーナが父親に抱きしめられるところと、墓前に佇むマスタングが浮かぶ。他にも色々あったと思うが。
漫画ではこれらのシーンの時間帯はどうなっていただろうか。カラーのアニメだからこそ印象深いだけで、漫画でも同じような時間帯だったか、アニメオリジナルだったか。うー読み返したい。